オリラジ中田敦彦が誤って伝えた米国株投資についての修正と補足①
こんにちは、こーたです。
今回は、何度かこのブログでも紹介したオリエンタルラジオの中田敦彦さん(以下、あっちゃん)が運営する「YouTube大学」のこちらの動画について
「これ、ちょっと違うよ!?」
と感じる内容があったので、補足すべき点と合わせ解説していきます。
まだその動画を見ていない方はリンクを貼っておくので先に見てからのほうが理解しやすいかもしれません。
【株投資①】誰でも稼げる米国株投資〜富裕層になるための鉄則〜
ここでの記事は①(前編)のみに触れていて、②(後編)についての修正・補足は次回まとめます。
YouTube大学は投資以外にも幅広いジャンルの動画を発信していますね。
本人も言っていましたが、
「興味を持つきっかけを与える」
という目的で動画を発信しているので専門知識を養うチャンネルではありません。
僕自身も「YouTube大学」を通して多くの刺激をもらっているので
あっちゃんを批判するわけではなく、あくまで
「正しい知識を持ってもらうためにこの記事を書いている」
ということを理解して頂ければと思います。
前置きが長くなりました。
今回の進め方は
です。
では、いきましょう。
1.動画の概要
まず、この動画全体を通して伝えたいことをまとめました。
①お金の正しい知識を持とう~金利と複利~
【金利】
・普通預金:0.01%
・国債:0.05%
・株式投資(長期):4~6%
普通預金や債券は利益を生み出さない...
⇒余剰資金は株式投資に回して効果的・効率的に運用しよう!
【複利】
単利:預けた「元本にのみ」利益がつく
ex)100万円を年利5%で20年間運用
100万×0.05=5万円
この5万円の受け取りが20年間続くので
100万円+(5万円×20年)=200万円
複利:「元本+利息」に利息がつく
ex)100万円を年利5%で20年間運用
100万円×1.05=105万円
2年目は105万円を年利5%で運用
105万円×1.05=110万
110万円×1.05=115.5万円
…
つまり
100万円×1.05²⁰=265万円
⇒雪だるまのようにどんどん大きくなる複利の効果を使おう!
②株式は長く持とう~デイトレードと長期保有~
【デイトレード】
パソコンに張り付いて売り買いをくり返し爆速で億を稼ぐ「マネーゲーム」
⇒ハイリスクすぎだからやめろ!
【長期保有】
投資の神様のウォーレン・バフェットも推奨する投資法で不労所得を得ることが出来る「マネーマシーン」となる
⇒お金持ちになる必須条件である「お金がお金を生む仕組み化」をしよう!
③株式投資の種類~キャピタルゲインとインカムゲイン~
【キャピタルゲイン】
100万円で買った株が10年後に150万円になり売却し50万円GET!
※いったん税金は無視(後で触れます)
⇒安く買って高く買うという「株の値上がり」を狙う投資法
しかし、ギャンブル性が高く危険!複利を狙うなら…(次へ)
【インカムゲイン】
100万円を投資して、毎年4%の配当金が出るから4万円/年GET!
※いったん税金は無視(後で触れます)
⇒安定的に配当を受け取れるためギャンブル性は低く、配当を再投資することで複利の効果を最大限得ることのできる投資法
今回のツッコミどころはこのキャピタルゲインとインカムゲインについてです。
キャピタルゲインのギャンブル性については、短期ではなくそもそも長期保有を前提といているためリスクを抑えられています。
なので、まずここで「キャピタルゲイン=ハイリスク」ということを否定しておきます。
④国と株式会社の性質から投資先を選ぼう~日本株と米国株~
【日本株】
1970年代の護送船団方式の名残で、一度上場すればそこに居続けられるという文化がある(企業と国の結びつきが強い)
⇒株主へ還元するという意識がそこまで強くないため、あまり恩恵を受けれない...
【米国株】
株主への見方が根本的に違い、株主あっての会社という認識(経営者と株主の結びつきが強い)
※米国の”株主至上主義”はコロナの影響で見直すべきという議論がありますが、ここでは無視して「米国=株主至上主義」という事にします
⇒株主還元に積極的なため、高配当な企業も多い!
という①~④の4ステップで結論は
「株主へ積極的に還元する米国にインカムゲイン(配当金)を狙った投資をして、それを再投資することで複利の恩恵を最大限受けよう!!」
ということでこの前編は終えます。
さて、ここからが本題です。
2.キャピタルゲインとインカムゲインについての訂正
あっちゃんはこの動画で
「キャピタルゲインはギャンブル要素が強く複利投資ではない。複利を狙うならインカムゲインのほうがいい」
と言っています。
ここがそもそも間違っているので、これ以降の話が間違った方向に進んでしまっています。
配当金再投資による複利効果
言葉では分かりにくい部分もあると思うので、配当金を再投資する一連の流れを図でイメージしていきましょう。
流れとしては
企業が利益を生みだし(=①)、配当金として株主へ還元(=②)し、株主が受け取り(=③)、それをその企業に再投資(=④)するこのサイクルの繰り返しです。
「もらった配当金を再投資して、来年もっとたくさん配当金をもらおう!」
というのがインカムゲイン狙いの投資家の心境です。
もちろん「配当金=お小遣い」として手元に入れる投資家もいますが、便宜上ここには触れずに進めます。
配当金は「ひと株あたり○円」と企業ごと決められています。(変動あり)
実際に配当金を受け取り、これを再投資にまわし保有株数を増やすことで、徐々に手元に入る配当金の額が大きくなるという複利効果を一番感じやすい投資方法になります。
この動画で言われているロジックだと
株主還元に積極的な企業は配当金を出すので高い複利効果を狙うことができる
という事になりますね(ここまではギリわかる)
ということは逆に
配当を出さない企業(=無配当企業)は株主還元に消極的で複利の力を活かせない
というロジックも成り立ってしまいます(おかしい)
この無配当企業で代表的なのはAmazonですね。
GAFAM(Google,Amazon,Facebook,Apple,Microsoft)の一角を担う大企業で投資家からも人気です。
「…なんで複利の力を活かせないのに人気なの?」
という疑問が生じますよね。この矛盾について謎解きをしていきましょう。
企業利益を自社のために「再投資」
Amazonのような無配当企業は先ほど載せた図とはお金の流れが異なり、このようになります。
利益を株主を介さず、直接企業へ再投資しています。
この再投資は主に設備投資や研究開発費に回すことが多いです。
つまり、自己投資によってさらに大きな利益を上げ、企業を大きくしていく。その利益を再投資し…(以下ループ)
という形で
「企業内で再投資し、複利の力を働かせる」
のが無配当企業の姿になります。
これは結果的に株価の上昇につながるので
「上昇後に売却しキャピタルゲインを得る」
という形で株主へ還元します。
つまり何が言いたいかというと
「配当金の有無にかかわらず複利の力は働く」
ということです。
再投資しているのが「自分」か「企業」か
の違いになります。結局は複利はどちらも効いています。
隠された「税金」の存在
今回の動画で語られていなかった「税金」ですが、キャピタルorインカム論争で忘れてはいけない最も重要な存在です。
通常、配当金や売却益に対しては約20%(20.315%)の税金がかかります。
例えば
100万円投資をしていて、5%の配当利回りだとすると
100万円×5%=5万円
の配当となりますが、これに約20%の税金がかかるので
5万円×(1-20%)=4万円
になってしまいます。
つまり実質利回りは4%ということになりますね。
これを再投資すると次は
104万円×5%=5.2万円
5.2万円×(1-20%)=4.16万円
(以下∞)
となります。
更に、この動画でも取り上げられている米国株の配当金を受け取る場合は「アメリカで10%の課税がある」ため、合計で約30%の税金が配当金を受け取るたびに課税されます。
一方でキャピタルゲインの場合は約20%の税金のみになります。
なので
インカムゲインでの再投資は非効率になりがちです。
ここについて触れていなかったのでインカムゲインが魅力的に見えますが、実際はキャピタルゲインのほうが投資効率的にみると優れています。
では、実際に同じ条件でインカム/キャピタル狙いでの投資をした場合、将来的にどのくらいの差が生まれるのか検証してみましょう。
【条件】
①元本100万円
②投資期間は20年
③利回りはどちらも5%
④投資先は米国(なので配当を受け取る際は20.315%+10%が引かれます)
この4つを条件にして検証してみます。
まず、キャピタル投資家(=キャピタルゲイン狙いの投資家)の1年目の運用益は
100万円×5%=50000円
になり、これを2年目へ向けて再投資
次にインカム投資家の1年目の配当金は
100万円×5%×(1-30%)=35000円
になるのでこれを2年目へ向けて再投資
を繰り返します。
下のグラフはそれぞれの資産推移を示したものです。
最終的にキャピタル投資家の場合
100万→252万7千円(252%up)
一方で毎年5%の配当金を受け取り再投資をする場合
100万円→192万2千円(192%up)
になりました。両者の差額は約60万円です。
インカムゲインの場合、配当金が出るたびに30%課税されるでどうしてもキャピタルゲインと比較したら効率が落ちるのは当然ですね。
ここまで読むとインカムゲインのメリットがないように感じますが
インカムゲインは資産が大きくなった時に莫大な力を発揮します。
あまり現実的ではない数字かもしれませんが、分かりやすく1億円の資産をもっているとします。
仮に米国株の高配当ETFとして人気のSPYD(配当利回り5.4%)に投資をした場合の配当金は
1億円×5.4%×{ 1-(20.315%+10%)}=378万円/年
になります。
厚労省が発表した平成30年度の世帯収入の中央値が423万円なので配当金だけで生活をある程度はカバーできてしまいます。
まさに不労所得ですね。できればこのレベルまで行きたいですね~(何十年後)
最後に話がそれてしまいましたが、前編の動画に対する修正と補足は以上になります。
まとめると
・配当金は受け取るたびに課税される!特に米国株の場合は+10%も!
という事です。
誤った情報に流されないためにも基礎固めは重要ですね。
SNSやYouTubeの他に今は一般人でも本を出版できますが、これらはビジネスなので、私たちの食いつきのいい情報を発信することで集客し、利益をあげている(かもしれない)ことも忘れずにいましょう。
個人的には
「信頼できる書籍をメインにし、プラスアルファでSNSやブログ、YouTubeを使う」
という勉強法はインプットとアウトプットを交互に行えるため非常に効果的だと思います。
長くなりましたが、今回は以上になります。
では、また次回の記事で
次回
オリラジ中田敦彦が誤って伝えた米国株投資についての修正と補足②