投資初期は下落リスクを気にしなくてもいい理由
こんにちは、こーたです。
今回は自分自身が投資初期に感じていた
「せっかく投資を始めたのにいきなり株価が下落したらどうしよう...」
という不安を払拭する記事になります。
投資を始める予定の方はおそらく人生で初めて「お金の価値が日々変わる瞬間」を目の当たりにするので多少の恐怖感はあると思います。
この記事ではそんな恐怖感を少しでも和らげればと思いますのでぜひ最後まで見ていってください。
また、投資を既に始めている方も投資への向き合い方の参考になると思うので見ていってくれるとうれしいです。
ここではS&P500の過去25年間分のデータをもとに検証していて、この期間内には
が含まれています。
なので統計データとしてはある程度信頼性は高いと思っています。
進め方は
になります。
では、いきましょう。
前提条件
まずは検証する上で条件を挙げていきます。
投資対象:S&P500指数
投資対象期間:25年間(1996~2020年8月)
積立金額:毎月3万円
参考データ:S&P500(1996-2020/8)の月末終値で計算
為替相場:ドル円チャート(1996-2020/8)の月末終値で計算
開始年を1年ずつずらした10通りのパターンで検証するので
- 1996~2011年
- 1997~2012年
- 1998~2013年
- 1999~2014年
- 2000~2015年
- 2001~2016年
- 2002~2017年
- 2003~2018年
- 2004~2019年
- 2005~2020年8月
の10通りで分析してみます。
ボリューム満点ですが、その分内容も濃いものになっています。
早速見ていきましょう!
S&P500の推移
と、いくまえにS&P500が過去25年でどのように推移したのかを見ていきます。
こう見るとコロナショックでの戻しのスピードが異常なのが分かると思います。
過去ブログでも紹介しましたが、米国はかなり手厚い金融緩和を行ったためこの短期間で戻しましたが、この政策が落ち着いてからどう値動きをするのかは疑問が残ります。
ハイテク株などはまだ伸びるかもしれませんがセクター(業界)によってはあまり楽観視できない状況だと感じています。
「おいおい、ほんとに大丈夫かよ...」
と思ってしまいます。
とはいえ、いまの米国株式市場は短期的な強気相場にはいりました。
過去の歴史を見ても
「強気相場は悲観的な状況の中で生まれる」
ので歴史通りだな、という印象です。
いつまで続くんでしょうかね。
永遠に続いてほしいですね。
心の声が漏れてしまいましたが、気にせずいきましょう。
為替相場
「1ドル〇〇円~」
というアレです。
アメリカだけでなく海外に投資をするならこの「為替相場」はとても重要な要素になります。
円高/円安について簡単に触れると
円高:円の価値が高い状態
円安:円の価値が安い状態
です。
100円/ドルが120円/ドルになれば、相対的に円の価値が落ちているので円安になります。
今まで100円で1ドル分のもの買えたけど今は120円も出さないと1ドル分買えないじゃん...
円安になると海外旅行客の人気が高まり、また日本からの輸出が活発になります。
「外国人:今は120円/ドル(円安ドル高)だから少ないドルでも日本でたくさん楽しめるじゃん!旅行行こ!」
一方で円高時期は、海外旅行がとてもお得な時期になり、また海外からの輸入が活発になります。
「日本人:今は80円/ドル(円高ドル安)だから少ない円でたくさん買い物できるじゃん、ラッキー!旅行いこ!」
さて、ここまででS&P500と為替の推移が分かったので、このデータを基に毎月3万円を投資した場合、どのように資産が増えていくのかを見ていきましょう。
※120円/ドルだからといって必ずしも円安とは言えないので注意が必要です。
ドル円の基準値をどこにするかで円高/円安の判断が各々異なるのでこの記事では自分の価値基準で円高/円安と表現しますので、ご了承ください。
運用成績
ここからの検証結果には手数料(信託報酬など)、配当金は含んでいませんので実際の成績と若干の誤差はあると思いますが、簡便化するために省略しています。
1996~2011年
積立累計金額(=元本):5,760,000円
資産合計:4,753,153円(-17%)
この期間では元本割れしていますね。
では、その原因を探してみましょう。
1996~2011年のS&P500と為替の推移を見てみます。
さて、この一連の検証で注目していただきたいのは
- S&P500の推移と資産変動の関連性
- 時期による金融危機のダメージ
です。
「16年という長期投資でいつから始めた場合がもっとも成績が良かったのか」
に注目してみてください。
運用成績という結果の数字のもう一歩奥に焦点を当てると何か見えてきそうです。
ここからはサクサク行きます。
1997~2012年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:5,793,463円(+1%)
トントンですね。
では、同時期のS&P500と為替の推移を見ていきます。
やはり海外に投資をする場合、為替の影響を大きく受けますね。
そこで一つの仮説を立ててみます。
長期投資の出口戦略は
- 株価の推移が堅調
- 円安相場
が共に満たされた時
この仮説が正しいのかは最後にまとめます。
1998~2013年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:8,939,221円(+55%)
急激に運用益に変化がありましたね。
また、注目してほしいのは赤で囲った箇所です。
この時期はITバブル崩壊とリーマンショックの時期になります。
なぜ、ここに注目してほしいかというのは次のデータを見てからにします。
さっそく要因を調べてみます。
この図から
2つの下落幅は変わらないのに「資産の下落幅」には大きな差が表れている
ことがわかります。
もちろん為替相場が影響していることも挙げられますが、何と言っても「投資時期」が大きく関わってくるのではないか、という疑問がわきます。
この疑問を解き明かしていきましょう。
まだピンとこない方はこのまま読み進めていってください。
傾向がつかめるはずです。
為替相場はS&P500の伸びに少し遅れながら100円台と戻してきました。
やはり為替の影響は大きいですね。
ただ、為替は無限に上がるわけではないので、ここからはS&P500の伸びが大きく影響してきそうです。
1999~2014年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:11,125,837円(+93%)
2倍近い運用益が出ていますね。
ITバブル崩壊の影響はグラフを見る限り誤差といっていいほどまでになりました。
では、S&P500と為替相場を見ていきます。
運用益が伸びた要因は
- S&P500の高値更新
- 円安圏への到達
です。
過去25年のドル円チャートを見ると100~120円/ドルの間を推移している期間が最も長いので、120円/ドル付近は円安と判断しています。
円安になると少ないドルで多くの円を売買出来るので、売却時の円換算でより多く換金できます。
つまり円安は米国株投資のコスパがよくなるということです。
この円安(この期間では115円/ドル以上)時期がどこまで続くかも注目してみていきます。
2000~2015年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:10,868,667円(+89%)
ひとつ前の検証結果より劣るもののそれでも十分なリターンを出しています。
サクッと同時期のS&P500と為替相場の推移を見ていきます。
円安分をS&P500の伸び悩みで打ち消しあってしまっていますね。惜しい。
2001~2016年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:11,375,093円(+97%)
2016年の最後数ヶ月でぐっと伸ばしてきましたね。
この期間のちょうど中間地点がリーマンショックの時期ですが、マイナスインパクトはさほど大きくないですね。
ちなみにITバブル崩壊の存在はないも同然です。
では、S&P500と為替相場の推移を見てみます。
赤矢印の期間が下落相場ですが、ぱっと見全体の25%といったところでしょうか。
割合もそうですが、キーポイントは「下落相場が投資期間のどのタイミングで来るか」です。
気づいた方はそのまま読み進めて結構ですが、まだしっくり来てない方は1996~2011年の資産推移を参考にしてみてください。
リーマンショックのマイナスインパクトに注目をすると何か見えてくると思います。
2002~2017年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:12,707,456円(+121%)
元本の2.2倍まで膨れ上がりました。
ではS&P500と為替相場の推移です。
S&P500は高値を更新し続けていますし、円高になる様子もまだないので、さらにいい成績が出る可能性が高いですね。
2003~2018年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:11,183,898円(+94%)
若干落ちましたが、それでも元本の約2倍というかなりいい結果です。
2018年の後半にガクッと下がってしまっていますが、これは恐らく株価が高騰しすぎたことを受けての調整だと思われます。
株価が上がりすぎると、実経済と株価が乖離しすぎることで下落リスクが高まります。
そこで一時的に株価を下げることで乖離しすぎないようにバランスをとるために株を売却し、株価を下げる動きがありました。
こればっかりは仕方ないですね。
では、S&P500と為替相場の推移を見ていきます。
下落相場の時期も全体の10%ほどで、時期的にも運用成績にはそこまで影響を与えていませんね。
2004~2019年
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:13,505,468円(+134%)
この15年が今回分析した中で最も成績のいい時期です。
世界的にも米国株式市場の好景気と言われてただけあって、「億り人」や「FIRE」を達成する人が多くあらわれたのもこの時期です。
「億り人」
株式やFXなどへの投資によって1億円以上の資産を築いた人のこと
「FIRE」
「Financial Independence / Retire Early (経済的に自立した早期退職) 」が正式名称
"経済的に自立した"とは、年間の支出を配当金や投資による運用益で賄える状態=働かなくても生きていける状態
を指します。
では、S&P500と為替相場の推移を見ていきます。
この15年で下落相場がたったの1年です。
文句なしの素晴らしい15年です。
この時期に投資をしていれば今頃資産が2.3倍になっていたのに...
と後悔しても過去の出来事なので、未来の株式バブルに向けて今のうちに動き出しておきましょう。
さて、最後の検証結果です。
2005~2020年8月
積立累計金額:5,760,000円
資産合計:12,923,264円(+129%)
この時期は言う事がありませんのでサクッとS&P500と為替相場をみましょう。
新型コロナウイルスが世界的に危険視された2020年1~3月で見ると2カ月で20%と急激に下落していますが、15年と広く見るとその下落もそこまでインパクトはなさそうに見えます。
さて、ここまでが1996~2020年8月の検証結果になります。
では、この検証を通して分かったこと、伝えたいことをまとめます。
仮説は正しいのか
先ほどまで立てていた仮説や気づきについて検証結果を基に分析してみます。
仮説1
長期投資の出口戦略は
- 株価の推移が堅調
- 円安相場
が満たされている時がいいのか
これについては10通りの検証に目を通せばわかりますね。
出口戦略(いつ株を売却し利益を確定させるか)を考える際には上の2つが同時に満たされている時がベストになります。
とはいっても、この検証は過去のデータを基にしているのでなんとでもいえますが、未来の株価や為替相場は読めないので、現実問題これについて完璧なタイミングを見定めるのはかなり難しいとされています。
ただ、まだ出口戦略を考えるには年齢的にも経験的にも早すぎるので、そこまで深く悩む必要はないと思っています。
仮説2
運用成績を大きく左右するのは
- 下落相場のタイミング
- 好景気のタイミング
「下落相場のタイミング」
については投資時期前半に来れば来るほど損失は抑えられます。
その理由は
「投資金額がまだ少ない」
からです。
投資資金が10万円で、そこから50%暴落しても損失額は5万円ですが、投資資金が100万円の場合は50万円の損失になります。
長期投資を前提とする場合、投資初期の資産額は微々たるものなので、20年スパンで見ると大したダメージではありません。
実際の資産推移のグラフを参考に見ていきましょう。
これは1998~2013年の投資成績です。
二つの金融危機の最大下落幅は
ITバブル崩壊:-11%(2002年9月の1ヶ月間)
リーマンショック:-17%(2008年10月の1ヶ月間)
となりました。
この下落時にどれだけ資産額が減ったのか、また2013年末時点の約900万円の資産と比較した際の比率はどのくらいかを見ていきます。
ITバブル崩壊:-72,126円(2002年9月の1ヶ月間)
(1,257,616円-1,185,490円)
リーマンショック:-761,075円(2008年10月の1ヶ月間)
(3,426,504円-2,665,429円)
損失額は10倍も違います。
また、この検証時期の最終資産額は8,939,221円なので、この資産額と損失額の割合を見ると
-72,126円は総資産の0.8%
-761,075円は総資産の8.5%
になります。
0.8%はほぼ誤差みたいなもんですね。
このことからも、投資初期における金融危機などの下落リスクは考えるべきではないことがわかります。
そして「好景気のタイミング」は下落相場のタイミングとは逆で後半であればあるほどいいです(理想はずっと好景気であることですが)
その理由は
- 元本が大きいため、資産もその分大きく増える
- 複利効果が期待できる
ためです。
ここまでの推移を見れば視覚的に分かると思うのでここまでとします。
まとめ
では、今回の検証結果です。
今回は載せていませんが、投資期間を10年とすると勝率はもう少し下がるので長期投資が私たち個人投資家の鉄則と言えます。
さて、今回は過去最長(約7600文字)の記事となりましたが結論
- 投資初期の下落リスクは気にせずに淡々と積み立てていい
- 長期であればあるほど勝率は大きく伸びる
の2つになります。
今はコロナショックによる大規模な金融緩和で短期的な株式バブルの後には不況が訪れると言われています。
投資初期の暴落は誤差みたいなものなので、逆に今のうちに暴落を経験しておきたいのが個人的な意見です。
資産へのダメージが少ないうちに、下落時の対応やメンタルの持ち方などを学んでおいて次の暴落に備えるのがこれから自分がやるべきことかな、と感じています。
よく「この強気相場には楽観視はしていない」という理由も下落に耐えるための心づもりでもあります。
投資手法や向き合い方は人それぞれですが、この記事が
「資産が減るのが怖い」
「コロナショックで世界的な不況が来るから投資はしたくない」
という方にとって少しでも前向きなデータになれば幸いです。
目先の利益ではなく、もっと遠くを見ると意外と心が軽くなるかもしれませんね。
おまけ
これは1996~2020年8月、つまり25年間のS&P500への投資成績です。
資産合計:22,689,830円
積立累計金額:8,880,000円(+155%)
20年以上の長期投資の場合、〇〇ショックや〇〇危機といったマイナスインパクトがあってもさほど大きなダメージがないのが分かりますね。
コロナショックの下落による恐怖心から狼狽売り(株価が急激に下落したことによるパニック売り)をし、投資を継続できないのが一番もったいないですよね。
こういうデータからも一般人が行う投資は長期間淡々と積み立てるのがリスクを抑える投資法の一つだという事が分かると思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
過去最長(約7600字)の記事になりましたが、少しでも参考になったのならありがたいです。
さすがにもう少し短くする意識します。
では、また次回の記事で。